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交通事故賠償(中公新書)(1992年刊)>> 本のご注文はこちら

【書評】

 交通事故が再び増加しつつある今日、被害者の物質的精神的救済が切実な課題となっている。この救済は、主体的行動なくして自動的に与えられるかに錯覚され易いが、実は被害者対加害者・保険会社という対立構造の中で、交渉や裁判、調停を通じて獲得されるのである。
 本書は、交渉などでは情報量の差が決定的に響くという認識に立って、有用な情報を実務の現場から選び出し、平明かつ具体的に解説しており、交渉の「対等化」に大いに役立つものと期待される。
 例えば、賠償には、弁護士会の基準、任意保険の基準、自賠責保険の基準の三つがあり、第一の基準が裁判所の判決にほぼ照応していること、事故直後の現場検証や取り調べの結果が民事訴訟に大きな影響を及ぼすこと(実況検分調書の恐さ)など、生活教本知識として知っておくべきことが数多く盛られている。

・・・・・・・・・・ 中 略 ・・・・・・・・・・

 命の値段とは何か、裁判の正義は幅があるのか、詐病や民事暴力の介在、過剰診療など医療倫理、誠意と交渉の問題など、本書の提起している問いは、広くかつ深い。

中央大教授 小島武司
(産経新聞 平成4年(1992年)6月16日 夕刊より抜粋)

【本書まえがき】
 弁護士として、交通事故の賠償交渉にたずさわるようになって25年になる。その間、さまざまな被害者や加害者、そして保険会社の担当者があらわれては消えていった。これまでに会った交通事故の関係者は、おびただしい数に及ぶだろう。その中でも、ときどきふっと思い出される人物がいる。それは味覚を失ったイタリア料理店の陽気な経営者であったり、寝たきりになった微笑の美しい若い女性であったりする。被害者の切なる願いと、それを必ずしも十分に満たすことのできない損害賠償制度の狭間にあって、自分自身も長い間呻吟してきたように思う。夜、昼問わず。交通事故の被害者とその対岸にある加害者や保険会社。その両者の関係を賠償問題にスポットをあてて、できるかぎり実証的にとらえようとしたのが本書である。
【目次抜粋】
交通事故へのアプローチ
  • 現代法としての交通事故賠償
  • 被害者を取り巻く心的風景
    物質的救済と精神的救済
    「誠意」と「制裁」
    被害者のハンディキャップ
  • 交通事故賠償の百鬼夜行
  • 人身賠償のリーダー
賠償交渉の舞台
  • 舞台はどのようにしてととのうか
    はじめに誠意ありき◇圧倒的に多い示談による解決◇日本人としての誠意を さまざまな登場人物(1)被害者(2)加害者(3)損害保険会社 ◇自賠責保険会社と任意保険会社 ◇任意保険の種類 ◇保険会社による対応の違い (4)アジャスター (5)調査機関 (6)交通弁護士 ◇交通弁護士とはなにか ◇交通弁護士の活動 (7)示談屋 ◇示談屋とはなにか ◇示談屋の介入と保険会社の対応 ◇示談屋の報酬
交通裁判の現場
  • 交通訴訟の審理
    交通訴訟の流れ ◇交通訴訟の形態◇和解による終結
    交通訴訟の争点 ◇責任論と損害論◇過失相殺◇好意同乗◇原因競合と因果関係◇受傷の有無と医学・工学鑑定◇弁護士費用
    審理の迅速化とその弊害 ◇弁論兼準備・弁論兼和解◇画一化への危険
  • 民事と刑事の相関関係
    民事に及ぼす刑事の影響 ◇民事訴訟で取り寄せられる刑事記録◇過失認定と損害額への影響
    刑事に及ぼす民事の影響 ◇示談の成否と刑事処分◇被害者の要因による示談不成立と刑事処分
損害をめぐるエコロジー
  • 後遺傷害認定のすきま
    後遺障害補償のプロセス ◇後遺障害とはなにか◇後遺障害等級の認定方法◇後遺障害に基づく損害◇逸失利益の考え方◇示談成立後の後遺傷害の発生
    補償のすきまを埋めるために ◇鞭打ち症と14級にも満たない後遺障害◇現行の後遺障害別等級表の問題点◇新しい評価方式への模索
  • 被害者からの愁訴
    休業損害におけるブーメラン効果 ◇自営業者の過少申告◇休業期間への不審
    慰謝料の格差 ◇3つの慰謝料◇3つの基準
    修理費 対 時価の争い ◇修理費の見積り◇修理費 対 時価
国境を越えた賠償交渉
  • 国境を越えた賠償交渉
    日本人の海外における交通事故
    海外渡航者の増加と事故の急増
    やられ損、死に損のアジア
    海外で加害者になった日本人
    法的な問題 ◇不法行為の準拠法◇国際司法共助◇不法行為地法主義への懐疑◇相続を否定した稀なケース
  • 外国人の日本における交通事故
    めだつアジア系外国人の事故
    事実上の問題 ◇外国人の休業損害・逸失利益◇医療費をめぐる苦労
    法的な問題 ◇準拠法の確定◇逸失利益・慰謝料算定における悩み◇一人の中国人に関する二つの判例
被害者救済へのあらたな道
  • メーカー、行政への責任追及
    機能の欠陥から安全の欠陥へ ◇死を招く2点式シートベルト◇かわるべき欠陥車の概念
    PL訴訟への道 ◇PL法の成立◇メーカー、行政への責任追及◇アメリカ、ドイツでの側面衝突テスト◇日本版レモン・ローの制定へ
  • 被害者救済をはばむもの
    コストの問題 ◇コストをとりまく状況◇救済策
    アクセスの問題
  • 被害者のセルフディフェンス
  • 交通事故賠償のユートピア

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