失敗しない交通事故弁護士の選び方
「交通事故専門弁護士サイト」急増の裏側
私が「交通事故一筋の弁護士 加茂隆康法律事務所」と銘打って当サイトを開設したのは2000年10月です。その後10年間、交通事故についての弁護士のサイトは当サイトを含め、わずか数件程度でした。
ところが2011年春、突然25件に増えました。その後は雨後のタケノコ状態です。
急に多くの弁護士がいっせいに交通事故を勉強し、専門家が増えたのでしょうか。そうではありません。
現在でも、司法研修所(司法試験合格者が実務研修をうける教育機関)では、複雑な交通事故の保険金請求の仕組みを教えていません。そもそも日本の弁護士業界には、「専門弁護士」の認定制度がないため、弁護士の「得意分野」は、自己申告制となっています。
この点が医師と違います。長い時間をかけ、実績を積み、自分で勉強した人も、本を2,3冊読んだだけで「専門家」を自称する人も混在しているのが交通事故弁護士の実状です。
そのため、当事務所へは下記のような苦情が寄せられています。
- 保険会社側の言いなりの額で、示談をするよう勧める。
- お客様がネットで調べた正当と思われる金額を弁護士に伝え、それを保険会社に要求してほしいと言ったのに、動いてくれない。
- 提案や要求を、にべもなく「だめだ」と切り捨て、味方になってくれない。その理由を説明してくれない。
- 勝手に話を進めてしまい、お客様には事後報告しかしてくれない。
- 裁判途中で、お客様にとって非常に有利な証拠が出てきたのに、弁護士がそれを無視して交渉を進めてしまう。
交通事故弁護士の実状
「交通事故なんか、弁護士なら誰でもできる」という人がいますが、とんでもない間違いです。なぜかと言えば、交通事故の賠償交渉には、
- 自動車保険に関する詳細な知識
- 整形外科学をはじめとする医学への識見
- 保険会社の戦略に対する洞察
が要求される上に、判例の集積も多岐にわたって、複雑を極めるからです。
保険会社に入社した査定マンでさえも、知識の習得には10年かかると言われています。
無料弁護士の問題点
「過払い金請求」事案で食べていた弁護士は、仕事がなくなり、次のターゲットとして弁護士費用担保特約付(つまり弁護士報酬金を確実に取れる保証付)の「交通事故」へいっせいに流れてきました。
(考えてみると「相談も着手金も無料、取ったお金の中から弁護士費用をいただくので、あなたの負担はゼロ」をウリにする方法も、過払い金請求の時と同じです。)
当事務所へ寄せられる、お客様が不満をもつ弁護士のほとんどは、「相談料・着手金無料」をうたい、ここ数年の間に「交通事故弁護士サイト」を立ち上げた弁護士です。実力がないまま、複雑な交通事故事件を受任すれば、トラブルが起きるのは当然なのです。
大部分のお客様が、弁護士に事件を委任するのは初めてでしょう。お客様が弁護士の事件処理の仕方がよくわからないまま、「無料」に惹かれて、その弁護士に頼んだ場合、当然、事件処理は誠実にしてくれるだろうと考えがちです。
ところが、「無料」をうたう弁護士は、事件が解決しない限り「報酬金」が入りませんから、どうしても対応に手を抜き、賠償金が安かろうが、とにかく解決を急がせようとする傾向があります。お客様ごとの事案の違いを細かく検討せず、パターン化してその中にはめ込んだほうが早くラクに終わるからです。
つまり、お客様が期待する弁護士の活動内容と、実際の弁護士の姿のありように、大きなギャップがあると言えます。そうではない、誠実な弁護士ももちろんいると信じたいのですが、私のところへは苦情ばかりが入ってくるのが、現実です。(→トラブル相談実例)
考えてもみて下さい。サービス業の中で、医師、美容院、ホテルなどで、無料のところなどふつうありえません。仮にあったとしたら、被災地でのボランティアぐらいのものです。「無料」に充実したサービスを望むのは、無理というものです。
私から見れば、弁護士が無料で受任し、その代わり仕事に手を抜き、賠償金額をアップさせることよりも、いいかげんな金額で解決を急がせるなどというのは、お客様をないがしろする、とんでもない裏切り行為です。
あなたは大切な手術を、安さばかりをウリにする医師に頼みますか。
きめ細かく検査し、問診し、症状を見てよく話し合い、手術のメリットデメリットをわかりやすく説明してくれる、経験豊富な医師に頼んだほうが、医療費がかかっても安全だとは思いませんか。
それと同じで、あなたの状態が重大であればあるほど、探す時間、手間、費用をかけて、その分野に本当に精通した弁護士を見極めることが大切です。
委任した後に「この弁護士、全然ダメ……」と気づき、当方に「代わってほしい」とのご依頼が多いのですが、残念ながらそれでは手遅れなのです。
裁判手続や示談交渉は、やり直しできません。「弁護士を変えたから、今までの交渉はなかったことにして、白紙に戻す」ことはできないのです。
私は、他の弁護士とトラブルになって相談にいらしたお客様の書類を見て
「こんな証拠を出すべきではなかったのに…」
「このとき、なぜ反論しなかったのか」
「診断書の見方が雑。この症状を計算に入れれば、後遺障害等級がもっとアップしたのに」
と思ったことが何度も何度もあります。
「無料」をうたう弁護士の多くは、経験が浅く、ネット上の見かけとは裏腹に、十分な実力を備えていないことがあります。本人自身が、「どこまでの損害を請求できるか」「どう立証すればよいか」を気づいていないのです。
私がテレビで、ある交通事故損害賠償請求事件の判決についてのコメントを求められた時のことです。
「画期的な判決ではないか」とのことで、スタッフから、判決文を見せられました。たしかに判決自体は画期的なものではありましたが、私はある項目の請求が抜け落ちていたのを、発見しました。
「原告(被害者側)弁護士は、どうして○○○○の項目を請求しなかったのか」
「請求していれば、それも認められ、もっと高額の賠償金を受け取れたろうに」
と、残念に思いましたが、もはや後の祭りです。
このように弁護士が実力不足であっても誰にも訂正されることはなく、最終的にお客様が損をしても、それが発覚しないで終わることが最大の問題だと、私は思います。
弁護士費用担保特約付なら、
費用の心配はほとんどいりません。
あなたの自動車保険が「弁護士費用担保特約」付なら、弁護士費用300万円と相談料10万円までは、ご自分の保険から弁護士費用が出ます。多くのケースは、この範囲内で弁護士費用はおさまります。
ですから、相談料、着手金、報酬金が有料でも、長い経験をもつ卓越した弁護士に頼んだ方が、実質的には経済的負担がほとんどかかからない一方、細心の法的サービスを得られる点で、あなたにとって、絶対お得です。
(それでもまだ「無料」がよいとお考えの方は、リスク覚悟で、どうぞそちらをあたって下さい。)
失敗しない弁護士の選び方
初めて弁護士に接するあなたが、実力ある有能な弁護士を選ぶにはどうしたらよいでしょう。
その方法をご説明します。
Point1著書のある弁護士を選ぶ
交通事故の著書のある弁護士を、まずお勧めします。
著書がないということは、専門性の裏づけがない、ということです。
その著書も、単なるハウツー本より、有名な出版社からの新書のほうが上位です。なぜなら、新書は、出版にこぎつけるまでのハードルがきわめて高く、着想の斬新さ、分析の鋭さ、構成の確かさ、文章のなめらかさといったことが要求されるからです。弁護士の知識が整理されていて、明晰であることが、出版を許される絶対条件です。
新書を書くのは、単なるハウツー本以上の豊富な知識と経験がなければできるものではありません。
最近は、有名出版社も自費出版部門を設けています。自費出版した本を、あたかも商業出版本のように宣伝する人もいます。自費出版本は本の形をしているだけで、「商業出版のハードルを超えられない人が出している小冊子」とお考えいただいたほうが無難です。
お金さえ出せば、誰でも、学生でも、自費出版はできます。自分で費用を負担すれば、新聞広告も出せます。
が、そのような本は、タイトルも構成・文章・内容も素人の域を出ません。
「発売元」が有名出版社名であっても「発行所」「発行元」として、「○○社△△△」(自費出版部門の名称)などと、頭に有名出版社の名を冠しているのは、自費出版本です。商業出版本は、発行所・発行元(刊行した会社名)が必ず有名出版社本体になっています。
「発行所」「発行元」名をネット検索してみれば、自費出版本か否か、すぐわかります。
Point2経験年数で選ぶ
交通事故のような専門性の高い分野では、弁護士の実力は、何といっても経験年数がものを言います。
私自身をふりかえれば、10年目よりは20年目のほうが、実力がついていました。20年目よりは30年目、30年目よりはさらに現在の方が、相手の戦略に対する読み、駆け引きのコツ、洞察力といったものが、深まっているように思います。
交通事故に限らず法律問題は、人間対人間の争いです。私自身、20代、30代の頃をふりかえりますと、知識、戦略、駆け引き、洞察力といったあらゆる面で、未熟だったと思わざるをえません。中公新書を書くようになってからでさえ、昔より今の自分のほうが実力は増しています。
弁護士も医師と同様、経験年数の長い方を選ぶのが、一番賢明です。
弁護士の経験年数は、ホームページで弁護士登録年(19○○年など)を調べれば、すぐ計算できます。
Point3「サイトだけ交通事故専門弁護士」は避けよう
サイト上で「交通事故専門弁護士」とうたっていたので訪ねてみたところ、実は離婚、相続、不動産など何でもこなす町弁(町医者の弁護士版)、小売スーパー的弁護士で、取り扱い分野の一つとして交通事故もやっているにすぎなかった……というお客様の失望の声も、ひんぱんに寄せられます。
「交通事故○○」「○○交通事故△△」という特設サイトは、客寄せのための広告です。「交通事故」などのキーワードでの上位表示を狙った、取り扱い分野別の特設サイトにすぎません。2011年春以降のこのようなサイトの急増にともない、当事務所では他弁護士とのトラブル救済のご相談が激増しています。(→相談事例)
サイトだけで交通事故専門をうたっている弁護士は、お客様の期待するような実力は備えていない、と思った方が無難です。
「サイトだけ交通事故専門弁護士」かどうかは、法律事務所名で検索し、取り扱い分野を調べれば、すぐわかります。多種事案が載っていれば、交通事故だけに注力しているわけではありません。
また、弁護士検索サイトで、分野ごとのエキスパートを選抜しているかのようなものも見受けられます。これはそのサイトに掲載を希望した弁護士が、時には有料で名前を載せてもらっているだけです。公的な機関がふるいにかけ、厳選したわけではありません。
このようなサイトに弁護士が自らを登録し、お客様の紹介をうける行為は、弁護士法や日弁連の指針に違反する可能性が指摘されています。