ドッキリ!実話

示談後の悔し涙 (5/7)

― 弁護士会基準で納得させる道 ―

 弁護士会の基準で賠償金を請求できるといっても、任意保険会社がそれに応じないのではどうしようもありません。実は、算定の根拠となる基準をめぐって争いになり、泣かされている被害者は数多くいます。
 任意保険会社に弁護士会基準での算定を納得させるには、やはり「でるとこへでる」か、弁護士をつけるしかないように思います。「赤本」とか「青本」という弁護士会基準があることは、任意保険会社の担当者も十分に承知しています。それどころか、損保の査定部門にはそれらの本が常備されています。それでも任意保険の担当者(というか上司)は保険金を安く抑えたいため、弁護士会基準で算定することに強い抵抗を示します。
 なぜか。
 それが保険会社の査定担当者たちの、悪い意味でのポリシーだからです。
 現場の担当者のなかには、50代から60代の方も少なくありません。彼らの大部分は、実は他の職業からの転職組なのです。もと勤めていた企業や団体を定年退職したり、勇退した人が数多くみられます。資金力の豊かな損保が中高年をこうした形で再雇用するのは、労働政策上はたいへん結構なことだと思います。失業率を低下させる一助にもなります。
 ただそういう再就職組の方々には、決裁権がありません。30代から40代の、その損保はえぬきの中間管理職(センター長とか課長とか主任といった肩書きの方)が彼らを仕切っています。50代から60代の中高年の担当者は、自分より10歳も20歳も若い管理職の顔色をうかがいながら、上から指示されたマニュアル通りのきびしい査定をするのが実情です。
 彼らが、被害者から要求されるままに最初から弁護士会基準で査定したなら、若い上司に叱責されてしまいます。でも「でるとこ」へだされたり、被害者に弁護士がついた場合には話は別です。弁護士会基準でやることについて、仕方がないとあきらめもつきます。上司も納得してくれます。
「でるとこへでる」とは何か。
 必ずしも裁判を起こすことだけを意味するのではありません。日弁連交通事故相談センターとか交通事故紛争処理センターといった第三者機関に示談の斡旋を申し立てるのも含まれます。その申し立ては、弁護士をつけなくても被害者が自分でできます。

 このように書きますと、損保の中間管理職は非情な人間のように思われるかもしれません。

 「もう金はいらないから、かわりにお前を俺の車で轢かせてくれ。それっぽっちの金ですむんだったら、お前を轢かせてもらって、お前のいう金を払ってやるわ」

 被害者からしてみますと、こういいたくなるような冷徹な人間もいますが、中間管理職の方々も、その上司の指示や社の方針で動いています。これが損保や共済に共通した構造です。

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